一般社団法人JASTROの定款案の提示に当たってを掲載しました。
一般社団法人JASTROの定款案の提示に当たって
2007年9月18日
2005年の総会において決定された一般社団法人への移行の方針に従い、法人化準備委員会および理事会は法人定款案の作成を進めて参りましたが、この度、成案を得るに至りましたのでHP上に公開いたします。会員各位には、検討の上、質問、ご意見をJASTRO事務局(jastro-office@jastro.jp)までお寄せ頂きたく存じます。それらを勘案し、12月の福岡における総会において、定款の最終決定を行いたいと思います。
以下に定款案の作成において集中的な議論と検討の対象になった、2点について特に説明を行っておきます。検討の参考にして頂きたく存じます。
第一は第7条、正会員および准会員の定義です。提示の案では正会員の定義を「放射線腫瘍学あるいは関連する研究に係る学織と経験を有し、この法人の目的に賛同する医師等で定められた年会費を納める者」、准会員を「この法人の目的に賛同する医学物理士、診療放射線技師、看護師等で定められた年会費を納める者」(なお、医師は正会員となるものとし、准会員となることはできない。准会員が正会員となることを妨げない)としました。一方、現在のJASTRO定款では、正会員 を「本会の目的に賛同し、専門の学織と経験を有し定められた年会費を納める者」、准会員 を「本会の目的に賛同する放射線診断医、他科医師、診療放射線技師、看護師などで定められた年会費を納める者」とし、准会員から正会員への移行については提示の案同様に「なお、准会員が正会員となることは妨げない」となっています。
これらから解るように、提示の案では、正会員の主体が医師会員であることが読み取れるようにしました。勿論、主体であって全てでないことは「等」でお解かりいただけると思います。8月現在の正会員2000名の構成は医師会員76%、非医師会員24%であります。ちなみに2年前、医師会員は74%でしたので、近年の癌放射線治療への医学界および社会一般の関心の高まりを受けて、割合が2%上昇したことになります。理事会ではこの医師会員の割合を早い時期に80%超まで引き上げたいと考えています。それは次の理由からです。現在、JASTROでは標榜可能な「放射線治療専門医」制度を創設するため、日本医学放射線学会と共同で認定する新制度の創設に向けて、両学会間の意見調整と準備を進めていますが、この新制度がスタートした後、「JASTRO放射線治療専門医」の標榜を希望した場合、それが可能となる条件に、JASTROが法人であること、正会員に占める医師会員の割合が80%を超えていることがあります。「JASTRO放射線治療専門医」の標榜は、JASTROの将来の発展に係る重要な要素です。また、単に我々JASTROのみならず、我が国の、更に敢えて言うならばアジアの放射線腫瘍学の発展に影響します。今回の定款案の作成に際し、この点を重視したのは以上の理由によるものです。この事情を、特に非医師の正会員の方々は良くご理解頂きたく存じます。法人への移行に際し、現在の正会員はそのまま正会員として移行することは申すまでもありません。
新たな正会員の定義によって、JASTROが維持してきた良き伝統である会員職種の多様性が損なわれるのではないかと心配される向きがあるかも知れません。「放射線治療システム研究会」を淵源とするJASTROは、設立の当初から会員職種の多様性に富んだ組織でありました。しかし、正会員に占める医師の割合は次第に上昇し、かつ運営も医師主体へと移行して今日に至っています。ただ、この間に医学物理学領域では、日本医学放射線学会の一部会であった物理部会が、日本医学物理学会として独立し大きく発展しています。JASTRO正会員で医学物理士の方々は日本医学物理学会でも大いに活躍しています。これらの事象は、JASTROに内在していた"内なる多様性"が"外なる多様性"へと転化したのだと考えます。そして、総体としての多様性は保存されています。我々のJASTRO自体、日本医学放射線学会の"内なる多様性"が"外なる多様性"へと転化した結果です。その結果として、元の組織にある程度の純化が生じることは避けられないことをご理解頂きたいと思います。
JASTROにとって、適正な多様性の維持が今後の発展にとっても重要な要素となることは明白ですし、それを維持していく方針に今後も変わりはありません。問題は、運営がその多様性に相応しいものになっているか如何かです。実態は見るまでもなく、その多様性は代議員や理事の職種構成に反映されていません。この点に、省みて忸怩たるものがあります。法人JASTROにあっては、これらの点を改善した運営の在り様を、定款施行細則に書き込みたいと思っています。
第二の点は、役員、特に理事任期に関してであります。前回の代議員選挙・理事選挙から、理事の任期に限度を設け、1期3年の通算2期6年までとしました。この定款の改訂は、特定の個人や集団が長期に亘って学会運営を専断するのを排除することを意図したものでありました。それには其れなりの事情がありました。ただ、この時の改訂案には、理事会においても役員の自動的若返りを保障するメリットがある反面、他学会との交渉などにおいて、JASTRO役員が経歴で見劣りし不利にならないか等、心配する意見が一部にありました。その結果、代議員会ではこの点に関して議論が沸騰し、決定は挙手裁決に持ち込まれ可決されたものの、1/3強の反対意見がありました。このことは当時、提案者の一人であった私にとって衝撃でした。その後、もっと巧みな制度設計がないものかと、様々に思案し構想を練りました。法人では理事長を通算6年の制限から解き放ち、理事および会長経験者の中で立候補した者の中から代議員が直接選挙する構想を抱き、かなり長期に亘ってこれを温めていました。この場合、理事長と理事は同じく代議員の直接選挙によって選出されるものの、理事長は1名、方や複数名であるため、理事長は明確に一般理事に優越します。しかし、共に代議員による選挙を経ている点で、その権限には一般理事からの制約が自ずと掛かり、その独裁を防ぐと考えました。しかし、新法人法では理事長は理事の互選によるとされており、如何に条文の文言を工夫しても、理事長の直接選出は不可能でした。その後、会員数の増大、それに伴って増える仕事量の増大もあり、理事の増員も考えねばならない事態となりました。こうした検討の経緯を踏まえて、今回提示の定款案では第23条で、「理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとし、再任を妨げないが、通算5期までとする。但し、その任期が通算3期を超える理事の員数は定数の4分の1以内とする。」としました。定款では理事定数を14名~20名と規定しています。現在の構想では施行細則で理事数を16名にする心算でいます。現在12名ですから、一般社団法人JASTROの出発時には、4名の理事経験を積んだ正会員が理事として復活することになります(今年の理事選挙で選ばれた方は法人JASTROでも理事となります)。これによって、将来は学会運営の中軸になって欲しい若い理事から経験を積んだ老練の理事までが揃うことになり、他学会に対しても対等に向き合える理事会が成立し安定した学会運営が保障できると思われます。基本的に任期に制限を付けたことによって、特定の個人や集団が運営を専断することも排除できます。また、理事数を増やすことによって、非医師の正会員からもその構成比に相応しい役員を出すことも可能になるでしょう。非医師会員の構成が20%とした場合、3名の理事と言うことになります。3期までの理事枠に当てはめて考えると、各期1名の非医師の理事が可能になります。こうした運営は、第一の論点にも係って、是非、施行細則で実現したいと考えているところです。ただ、直近の選挙で直ぐにこの構成比を実現することは難しいかも知れませんが、数回の代議員選挙、理事選挙の後には実現できるものと考えております。
なお、今回の定款は新法人法の規定に基づいて作成したものであり、法律の専門家であるJASTRO顧問弁護士・古谷和久氏の絶大な援助と指導によって作成されたものであることを申し添えておきます。
以上、準備委員会および理事会で入念に議論を重ねた2点について、経過や背景を述べました。定款は学会のあり様を定める基本規程であります。国家で言えば憲法であります。代議員および会員諸氏の叡智を結集し、JASTROの今後の多いなる発展を保障する規程にしたいと考えております。各位の叡智をお寄せ頂く事を重ねてお願いする次第です。
JASTRO法人化準備委員会・理事会
定款起草責任者 理事 小野 公二