JASTRO

公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

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理事長挨拶

JASTRO理事長就任にあたって

公益社団法人 日本放射線腫瘍学会
理事長 宇野 隆

2022年12月

広島での第35 回日本放射線腫瘍学会(JASTRO)学術大会に際して行われた理事会で、JASTRO 理事長を拝命いたしました。JASTROは1988 年に日本での放射線腫瘍学の発展を願い設立され、2008 年に一般社団法人、2012 年に公益社団法人となり、2013 年日本医学会分科会に加盟しました。設立35 年の2022年末には会員数が4,200 人を超え、放射線治療専門医は1,400 人を超えました。この間に、科学技術の進歩とともにがん放射線治療は飛躍的な進歩を遂げ、限局性のがんから遠隔転移まで、個々のがん患者さんの多様な病態に適した高精度かつ低侵襲な放射線治療が日常診療で提供されるようになりました。患者さんやご家族をはじめ、国内・外の関連学会に対する社会的責任は、さらに大きくなっています。
平岡眞寛初代理事長が、JASTROの公益社団法人化、会員制度の改革等様々なご努力で、基盤整備と社会的地位の獲得を達成いたしました。西村恭昌第二代理事長そして茂松直之前理事長のご努力で、さらなる財政基盤の安定、新専門医制度への対応、粒子線治療の普及と保険適応拡大、さらに放射線治療の広報活動など、様々な面でJASTROが大きな発展を致しました。現在、治療専門医のみならず、医学物理士、専門技師・看護師も徐々に増加してきていて、がん患者さんに対する放射線治療の提供体制もさらに充実しつつあります。その中で、新しい時代に適応した日本の放射線治療のさらなる発展のために、学会活動のこれまで以上の活性化が求められているところです。

1) 学術活動の推進と国際連携
 学術大会は最も重要な学術活動の場で、JASTRO 最大の事業です。プログラムは学術大会長に一任することになりますが、学会としても多くの会員の皆様に満足してもらえるように最大限協力しています。高精度放射線外部照射部会、小線源治療部会、生物部会の活動は活発化の一途をたどっていて、新たな研究会も検討しています。学会誌JRRを年6 回、JASTROの活動を会員に紹介するJASTRO NEWSLETTERを年4回発刊しています。米国放射線腫瘍学会(ASTRO)、欧州放射線腫瘍学会(ESTRO)との連携をさらに深め、中国放射線腫瘍学会(CSRO)、韓国放射線腫瘍学会(KOSRO)、台湾放射線腫瘍学会(TASTRO)とも連携し、またアジア放射線腫瘍学連盟(FARO)をリードしJASTROのプレゼンスを高めます。

2) 臨床活動
 画像誘導技術の進歩により、病変やリスク臓器の位置と体内での動きがより正確に捉えられ、治療寝台上での自動位置修正、呼吸同期、追尾、迎撃、そして新たな即時適応放射線治療技術、医学物理学的な線量処方法の変革等で、最先端のがん放射線治療技術が確立してきました。粒子線治療施設数が増加し、数多くの臨床データをもとに適応疾患の拡大が進んでいます。BNCTや近年重要性が強く認識されるようになったRI内用療法を、関連学会と連携して発展させたいと思います。一方で、粒子線治療や即時適応放射線治療に対応可能な装置、そしてRI内用療法の大規模施設への集中、IMRTに関する技術的普及度と施設認定制度の乖離、小線源治療の提供体制、地域における治療専門スタッフの不足など、中~小規模施設や地域医療への影響は放射線治療分野においても大きな課題となっています。さらに、治療関連機器の機能向上とその保守は新たなコスト増を伴い、スタッフの充足度や放射線治療の普及度・患者数の確保とのバランスが慎重に求められる脆弱な状況にあります。JASTROでは引き続きこれらを解決すべき喫緊の課題と捉え、将来を見据えた実効的な対策をとるよう努めます。放射線治療を安全に提供するために、放射線治療の品質管理に関わる新たなシステム構築とその強化にも力を入れます。

3) 研究活動
 放射線腫瘍学の進歩にとって放射線生物学と医学物理学は欠くことのできない両輪です。例えば免疫チェックポイント阻害剤の登場やFLASHは物理学や科学技術の進歩と並び、放射線生物学的知見の重要性を我々に改めて認識させることとなりました。これまでも各部会等で基礎研究を深く広く探求して来ましたが、JASTROでは今後さらに研究の幅を広げ、独自の研究のみならず、研究を目的とした会員の海外との交流を支援いたします。日本放射線腫瘍学研究機構(JROSG)との連携も強化して、疾患を問わず臨床研究を推進します。各種がん治療に関わるガイドラインの作成に、放射線腫瘍医が強く関わっていけるように対応します。関連学会における放射線腫瘍医の数を増やし、それぞれの学会での臨床研究に深くかかわることができるリサーチマインド溢れる若手医師の育成が必要と考えます。

4) 教育活動
 医学生・研修医セミナー、看護セミナー、放射線腫瘍医に対する講習会はもとより、学術大会での教育講演や、ESTROスクール、各種セミナー、e-learningを含めた教育プログラムの充実、各種ガイドラインの整備等に努めたいと思います。放射線治療を志す医師のリクルート、医学物理士・放射線治療品質管理士・放射線治療専門放射線技師・がん放射線療法認定看護師の人材育成を推進します。日本そして世界の放射線治療の発展を担える若手、そして女性会員の育成に注力し、本学会活動への参画を支援・推進します。一方で、ベテランや離職した専門家でも新たな知見や技術を再び学べる環境づくりも検討したいと思います。JASTROは、放射線治療に携わる皆様の働き方が、将来を志す若い人たちの憧れとなるような社会を目指します。

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