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No.289
Enzalutamide with or without radium-223 in metastatic castration-resistant prostate cancer with bone metastases (EORTC-1333 / PEACE-3): a randomised, open-label, phase 3 trial

Journal: Ann Oncol. 2025 Sep;36(9):1234-1246
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40450503/

概要

目的: PEACE-3試験は、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の一次治療として(mCRPC診断後のfirst-line systemic therapy)、エンザルタミドにラジウム223(Ra-223)を併用することが、エンザルタミド単独と比較して生存や進行抑制の面で有効かを検証することを目的とした。
デザインと対象: EORTC GUCG 1333(PEACE-3)は国際共同、無作為化、非盲検、第III相試験である。対象は骨転移を有するmCRPC患者で、内臓転移は除外された。2015年から2023年にかけて12カ国56施設から446例が登録された。患者はエンザルタミド単独群(224例)またはエンザルタミド+Ra-223併用群(222例、6サイクル投与)に1:1で割り付けられた。2018年以降は骨修飾薬(ゾレドロン酸またはデノスマブ)の併用が必須とされた。
主要評価項目: 放射線学的無増悪生存期間(rPFS)。副次評価項目には全生存期間(OS)、次治療までの期間(TST)、疼痛進行、症候性骨関連事象(SSE)が含まれた。

結果

全症例の追跡期間中央値は約42か月、エンザルタミド単独群41.1か月、併用群42.3か月であった。主要評価項目であるrPFSはエンザルタミド単独群16.4か月に対し、併用群19.4か月であり、ハザード比(HR)0.69(95% CI 0.54–0.87, p=0.0009)と有意に改善した。サブグループ解析でも一貫した効果が認められた。
全生存期間(OS)の中間解析(80%イベント時点)では、エンザルタミド単独群35.0か月に対し、併用群42.3か月であり、HR 0.69(95% CI 0.52–0.90, p=0.0031)と有意差を認めた。ただし非比例ハザードが観察されており、最終解析での確認が必要である。
TSTは併用群で有意に延長(HR 0.57, p<0.0001)したが、疼痛進行やSSE発生については両群間に差は認められなかった。
安全性についてはGrade 3以上の有害事象がエンザルタミド単独群55.8%、併用群65.6%に発生した。併用群で多くみられた有害事象は高血圧(34%)、疲労(6%)、骨折(5%)、貧血(5%)、好中球減少(5%)であった。骨折はエンザルタミド単独群13.4%に対し、併用群で24.3%と高率であったが、2018年以降の骨保護薬の使用によりその発生率は53.6%から14.2%へ大幅に低下した。

考察

PEACE-3試験は、エンザルタミド+Ra-223の併用がrPFSを改善し、OSも中間解析で有望な延長効果を示した初めての第III相試験である。一方で、骨折リスクが明確な課題であり、骨保護薬の併用が必須であることを強調された。ERA-223試験*での否定的結果と対照的に、骨保護薬を適切に導入することで安全性を担保できることが示された点が重要である。
本試験は非盲検であり、また長期にわたり実施されたため、ホルモン感受性期における新規ホルモン薬(ARPI)導入などの治療環境の変化が結果解釈に影響する可能性がある。
*ERA-223試験(mCRPC骨転移症例に対するアビラテロン+Ra-223併用 vs アビラテロン単独)では、併用群で骨折リスクが顕著に増加(29% vs 11%)し、安全性の懸念から2017年に早期中止された。骨保護薬の使用が徹底されていなかったことが要因とされ、その後PEACE-3では2018年以降に骨保護薬併用が必須化された。

結論

mCRPCの骨転移患者に対する一次治療として、エンザルタミド+Ra223(+骨保護薬)の併用は、rPFSおよびOS改善を示す有望な治療選択肢である。骨折リスクの管理には骨保護薬の併用が必須であり、今後は最終OS解析の結果が待たれる。

コメント

PEACE-3は、ERA-223の教訓を踏まえて骨保護薬を必須化し、より安全にRa-223を併用できることを示した点で意義深い。OS延長効果はALSYMPCA試験を上回り、Ra-223の骨微小環境修飾による相乗効果が示唆され、有力な治療選択肢のひとつと考えられる。ただし、mHSPC期における新規ホルモン薬(ARPI)使用が標準化されている現在、mCRPC期での治療適応については今後の検証が必要である。
PSA低下効果が乏しいため単剤では使いにくく需要が減少しているRa-223だが、有効な併用療法として再び臨床的価値を発揮し得ることを期待したい。さらに、ホルモン感受性期でのRa-223導入可能性についても、将来的な検討課題となるだろう。

がん治療推進委員会 RI内用療法小委員会

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