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No.235
グリソンスコア9-10の前立腺癌患者に対する根治治療(根治的前立腺摘出術、外照射、外照射+小線源療法)における病勢と死亡率の比較

Radical Prostatectomy, External Beam Radiotherapy, or External Beam Radiotherapy With Brachytherapy Boost and Disease Progression and Mortality in Patients With Gleason Score 9-10 Prostate Cancer.

Kishan AU, Cook RR, Ciezki JP et al.
JAMA 2018;319:896-905. doi: 10.1001/jama.2018.0587.

はじめに

グリソンスコア(GS)9-10の前立腺癌に対する最適な治療法は分かっていない。

目的

根治治療が施行されたGS9-10の前立腺癌患者の臨床結果を比較すること。

デザイン、設定、参加施設

12施設(アメリカ合衆国:11施設、ノルウェー:1施設)において2000年~2013年に治療された1809人の後方視的コホート研究

受けたもの

1. RP 根治的前立腺摘出術(43%で救済局所照射あり)
2. EBRT 外照射(中央値EQD2:74Gy)+アンドロゲン除去療法(ADT、中央値22か月)
3. EBRT+BT 外照射+小線源療法(中央値EQD2:92Gy)+ADT (中央値12か月)

主たる結果、評価法

プライマリーアウトカム:前立腺癌特異的死亡率
セカンダリーアウトカム:無遠隔転移生存率、全生存率

結果

1809人中、639人がRP、734人がEBRT、436人がEBRT+BTを受けた。年齢中央値はそれぞれ61歳、67.7歳、67.5歳であった。経過観察中央値はそれぞれ4.2年、5.1年、6.3年であった。10年までにRP:91人、EBRT:186人、EBRT+BT:90人が亡くなった。調整済み5年前立腺癌特異的死亡率はRP:12%、EBRT:13%、EBRT+BT:3%であった。EBRT+BTはRPやEBRTより低い前立腺癌特異的死亡率と関連していた(ハザード比はそれぞれ0.38[95%CI:0.21-0.68]と0.41[95%CI:0.24-0.71])。調整済み5年遠隔転移出現率はRP:24%、EBRT:24%、EBRT+BT:8%であった。EBRT+BTは遠隔転移出現率がRPやEBRTより有意に低かった(傾向スコア調整原因特異的ハザード比はそれぞれ0.27[95%CI:0.17-0.43]と0.30[95%CI:0.19-0.47])。調整済み7.5年全原因死亡率はRP:17%、EBRT:18%、EBRT+BT:10%であった。経過観察の最初の7.5年以内において、EBRT+BTはRPやEBRTより全原因死亡率が有意に低かった(原因特異的ハザード比はそれぞれ0.66[95%CI:0.46-0.96]と0.61[95%CI:0.45-0.84])。7.5年以降はハザード比はそれぞれ1.16[95%CI:0.70-1.92]と0.87[95%CI:0.57-1.32]であった。EBRTとRPで治療された患者間において、前立腺癌特異的死亡率や遠隔転移出現率、全死因死亡率に有意差は無かった(7.5年以内も以降も)。

結論と関連性

GS9-10の前立腺癌患者において、RPやEBRTと比較して、EBRT+BTは「良好な前立腺癌特異的死亡率」や「遠隔転移までの期間が長いこと」と関連していた。

コメント

 他病死より前立腺癌自体で亡くなる割合が高いGS9-10の前立腺癌を当研究は検討している。GS9-10の前立腺癌において、「局所治療」の違いで5年後、7.5年後の前立腺癌特異的死亡率の改善に差が生じているという結果に至っている(後方視的)。 RPとmedian 74GyのEBRTでは7.5年以内も以降も前立腺癌特異的死亡率や遠隔転移出現率、全死因死亡率に有意差はなかったとなっている。
 しかしながら、EBRT+BTでは前立腺癌特異的死亡率でRPを上回っているのはなぜであろうか?median 92Gyを受けた患者さんくらいまで局所線量増加をするとRPの結果を上回れるということだろうか?RPの患者では比較的高めの43%が何らかの術後照射(アジュバント照射:8.7%、局所救済治療:34%)が施行されたと記載がある。しっかりとり決めた術後照射がなされればRPの結果は改善可能、と考察されている。
 median 92GyのEBRT+BTが前立腺癌特異的死亡率でmedian 74GyのEBRTを上回っているのは局所線量の差が局所コントロール差に結びつき、その差が「転移の“second wave”を防ぐ(Fuks et al. 1991)」かもしれないと考察されている。しかしながら考察でも述べられているように70Gy以上かつ24か月以上のホルモンを受けているのはEBRT患者のたった41%であることには注意が必要である。今後も更なる前立腺癌治療の発展に期待したい。

エビデンスレベル:Ⅳa
PMID:29509865

(順天堂大学附属練馬病院 久能木 裕明)