No.201
非中咽頭癌における予後予測マーカーとしてのp16タンパク発現およびヒトパピローマウイルス感染
p16 Protein expression and human papillomavirus status as prognostic biomarkers of nonoropharyngeal head and neck squamous cell carcinoma.
Chung CH, Zhang Q, Kong CS, et al.
J Clin Oncol. 2014 Sep 29. [Epub ahead of print]
目的
中咽頭癌においては、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染のsurrogate markerであるp16タンパク発現が予後因子として認識されているが、HPV感染との関連が少ない口腔癌、下咽頭癌、喉頭癌(これらをまとめて「非中咽頭癌」とする)におけるp16発現頻度やその意義はよく分かっていない。
対象と方法
RTOG 0129, 0234, 0522(これらはシスプラチン、セツキシマブ、ドセタキセルなどを含む同時化学放射線治療のレジメンが用いられている)で対象となった非中咽頭癌症例(683症例中311例)のp16発現およびHPV感染を免疫組織染色およびin situ hybridization法(ISH法)によって調べた。そして、p16発現およびHPV感染の有無による無再発生存や総生存に対するハザード比を計算した
結果
RTOG 0129, 0234, 0522試験における非中咽頭癌症例のp16発現陽性率はそれぞれ14.1%, 24.2%, 19.0%であった。ISH法によるHPV陽性率はそれぞれ6.5%, 14.6%, 6.9%であった。
p16発現陽性群と陰性群を比べた時、無再発生存に対するハザード比は0.63(95%信頼区間 0.42-0.95, P=0.03)、総生存に対するハザード比は0.56(95%信頼区間 0.35-0.89, P=0.01)で、p16発現陽性群の方が予後良好であった。
p16発現陽性症例のみを比較した場合には、非中咽頭癌に比べて中咽頭癌の方が無再発生存率、総生存率ともに有意差を持って良好であったが、p16発現陰性症例のみを比較した場合には、中咽頭癌、非中咽頭癌ともにほぼ同様の無再発生存率、総生存率であった。
結論
中咽頭癌と同様に非中咽頭癌でも、p16発現陰性の方がp16発現陽性に比べて予後が悪かった。一部の非中咽頭癌においてはHPV感染は治療後の予後に影響すると考えられる。しかし非中咽頭癌においては臨床応用の前に、免疫染色標本におけるp16発現のscoring systemやHPV検出方法にはさらなる改良が望まれる。
コメント
中咽頭癌に関しては2010年にAngらが報告して以降、HPV感染と予後との関連が良く知られているが(Ang KK, Harris J, Wheeler R, et al: Human papillomavirus and survival of patients with oropharyngeal cancer. N Engl J Med 363:24-35, 2010)、それ以外の頭頸部癌については良く分かっていなかった。
今回の論文を見ると、解析対象となったサンプルサイズは小さいものの、口腔癌、下咽頭癌、喉頭癌などでも約1-2割にp16陽性の症例があり、全体としてはp16陽性例では化学放射線療法による成績が陰性例に比べて良好であるとの事である。
詳細は原文を読んで欲しいが、免疫染色法によるp16発現とISH法でのHPV検出に関しては必ずしも一致しない症例があったり、部位別に見ると口腔癌においてはp16発現の有無で予後に差がなかったり、これからの症例の蓄積が必要な領域でもあると感じた。
PMID: 25267748
evidence level: -
(札幌医科大学・染谷 正則、福島 悠希)