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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.199
有痛性の転移性骨腫瘍に対する再照射に関する単回照射と複数回照射の検討:非劣性を証明するための無作為比較試験

Single versus multiple fractions of repeat radiation for painful bone metastases: a randomised, controlled, non-inferiority trial

Edward Chow, et al.
Lancet Oncology. 2014;15:164-71

背景

有痛性の転移性骨腫瘍に対する緩和放射線治療は有用であると広く知られている。化学療法の発達により、患者の期待予後が延長したため治療部位の疼痛が再燃する患者数も増加した。治療部位の疼痛が再燃した患者や、治療後さらなる疼痛の軽減を望む患者にとって同部位への再照射は一つの選択肢であろう。7つの施設でのコホート研究では527人中306人(58%)の患者が再照射で利益を得た(95% CI 0.49-0.67)とするデータがある。

この試験では照射後に疼痛が再燃した病変に対して8Gyの1回照射と20Gyの複数回照射(5回照射または8回照射)による再照射の疼痛緩和効果を比較している。

対象と方法

試験デザイン

Study design and participants

多施設、非盲検化、無作為化試験で非劣性を証明する試験。NCICCTG, TROG, RTOGなど多国籍の複数のグループからエントリーされる。

Brief Pain Score(BPI)にて2点以上の疼痛の症状があり、18歳以上で以前に同部位の骨転移に対して疼痛緩和放射線治療を受けた患者が対象。

患者は8Gy単回照射群と20Gy複数回照射群に1対1で割付された。20Gy/5fr.または20Gy/8fr.のスケジュールは前治療の部位および照射線量を鑑みて決定される。層別化因子は前治療のスケジュール、前治療への反応性、治療された施設である。

Primary endpointは2ヵ月間での疼痛抑制効果で、BPIにて評価されたcomplete pain responseとpartial pain responseの合計割合である。疼痛緩和効果はガイドライン(Radiation Oncol 2002;64:275-80, IJROBP 2012; 82:1730-37)に沿って定義されている。解析はIntention to treat(ITT)で行われた。

結果

2004年1月から2012年5月の間に両群共に425人の患者が割り振られた。単回照射の群の19人(4%)、複数回照射の群の12人(3%)が割り振り後にエリジビリティを満たさないと判断され、除外された(以下同順)。それぞれの群で140人(33%)、132人(31%)が2か月間の評価ができず解析不能とされた。ITT解析では118人(28%)、135人(32%)が疼痛緩和効果を得、両群に有意差は認められなかった(P=0.21、両群間の差異は4%であり95%信頼区間にて上限値は9.2であった。同上限値が10以下で非劣性を承認すると定義されていた)。
Per-protocol解析では116人(45%)、258人(51%)が疼痛緩和効果を得、単回照射群の複数回照射群に対する非劣性は承認されなかった(P=0.17、両群間の差異は6%であり95%信頼区間の上限値が13.2)。

最も頻繁に観察された毒性は食欲不振と下痢であった。食欲不振に関しては解析可能であった単回照射群の358人のうち201人(56%)、複数回照射群の349人のうち229人(66%)で有意に複数回照射群の方が多かった(P=0.011)。
下痢に関しては358人のうち81人(23%)、349人のうち108人(31%)で有意に複数回照射群の方が多かった(P=0.018)。
病的骨折は425人のうち30人(7%)、425人のうち20人(5%)で両群間に有意差は無かった(P=0.15)。
脊髄または馬尾圧迫は425人のうち7人(2%)、425人のうち2人(1%未満)で両群間に有意差は無かった(P=0.094)。

結論

再燃した有痛性転移性骨腫瘍に対する疼痛緩和目的の再照射では8 Gyの単回照射が20 Gyの複数回照射に対して非劣性が示された。ITTとper-protocol解析では結果が異なったが、毒性が20 Gyの複数回照射群で有意に多かったため複数回照射は患者にとって不利益であるのかもしれない。

コメント

本報告は史上初の有痛性骨転移に対する再照射に関しての単回照射と複数回照射の放射線治療を比較した試験である。近年日常臨床でも有痛性骨転移に対する再照射を経験することが多くなり、非常に参考にすべき臨床試験であると考える。初回照射時のスケジュールにもよるが、再照射においては本試験が存在する唯一のRCTであるため、本試験の参加患者と同様の条件の患者に関しては単回照射を標準治療と認識すべきであろう。

2014年4月の保険点数改正および今回の臨床試験の結果により、今後本邦での単回照射の在り方に変化が生じるかどうか興味深い。

PMID: 24369114
Evidence level ⅠB

(がん・感染症センター都立駒込 田中 寛・二瓶 圭二)

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