No.197
放射線治療臨床現場における業務負荷とストレス要因の定量的評価
Quantitative assessment of workload and stressors in clinical radiation oncology
Mazur LM, Mosaly PR, Jackson M, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 83(1):e571-e576, 2012
目的
業務負荷レベルやストレスの要因は複合的な状況下でのエラーの原因に関係があるとされる。
本論文では放射線腫瘍医の業務負荷とストレス要因を評価した。
さらに業務負荷とWHO(世界保健機関)による放射線治療のインシデントの発生頻度の間の潜在的な関連について調査した。
対象と方法
データ収集は,異なった放射線治療サブグループ(治療計画士,線量測定士,治療担当放射線技師,物理士,線量測定士,腫瘍医)からの21名研究参加者が作業した様々な業務を対象とした。
業務負荷はNational Aeronautics and Space Administration Task-Load Index (NASA TLX)を用いて評価した。ストレス要因は観察法によって定量化し,標準的な分類法で分類した。
サブグループと業務の比較には分散分析,多変量分散分析,ダンカン検定を用いた。
業務負荷レベル(NASA TLX)と放射線治療のインシデント発生頻度(WHO incidents)の関連は,ピアソンの相関分析を用いて解析した。
結果
合計で173の業務負荷評価が得られた。全体としては,治療計画士は相対的に作業負荷が小さく(NASA TLX レンジ:30-36),物理士は相対的に作業負荷が大きかった(NASA TLX レンジ:51-63)。
腫瘍医,治療担当放射線技師,線量測定士のNASA TLXスコアは40-52で変動した。
際立ったタスク間/サブグループ間の変異が認められた(P<.0001)。精神的負荷(P<.001),肉体的負荷(P=.001),効果(P=.006)に関してはサブグループ間で明らかな有意差があった。
典型的には,次の配分の解析された業務サイクル毎に3-5のストレス要因があった: 中断(41.4%),時間的要因(17%),技術的要因(13.6%),共同作業事項(11.6%),患者要因(9.0%),環境要因(7.4%)。
業務負荷とWHOによる放射線治療のインシデント発生頻度の間に明らかな相関があった(r = 0.87, P value=.045)。
結論
業務負荷レベルとストレス要因はサブグループ間で異なる。
これらの調査結果に影響を与える要因の理解は安全性向上のためのワークフロー手順,物理的な配置,さらに通信プロトコルの調整を導く。
これらの調査結果が浸透するかどうかをより理解するためにさらなる評価が必要となる。業務負荷レベルとストレス要因はサブグループ間で異なる。
これらの調査結果に影響を与える要因の理解は安全性向上のためのワークフロー手順,物理的な配置,さらに通信プロトコルの調整を導く。
これらの調査結果が浸透するかどうかをより理解するためにさらなる評価が必要となる。
コメント
本報告は放射線治療分野の業務不可とストレス要因を調査し,さらに放射線治療に携わるスタッフ間で比較したものである。
ストレスの原因は業務の中断,技術的要因,他スタッフとの連携要因が殆どを占めていた。
業務量に関しては,治療計画士(今回の場合はCTシミュレータの担当者のことを示す)の業務量が比較的少なく,物理士の業務量が比較的多いことが示された。
さらに業務量とインシデント発生頻度に相関があることが示された。
日本では米国ほど放射線治療の業務の分業化が行われていないが,今度物理士,品質管理士の増員,配置を考えるための一助となると考え,Journal clubで報告させていただいた。
PMID: 22503527
Evidence level -
(大阪大 沼崎 穂高)