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No.146
根治的放射線治療 / 化学放射線治療が施行された切除不能肺扁平上皮癌の治療成績

Unresectable Squamous Cell Carcinoma of the Lung: An Outcomes Study

Newlin HE,Iyengar M,Morris CG,et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys 74(2):370-376, 2009

背景と目的

肺扁平上皮癌は他の非小細胞肺癌に比べ局所再発が多く、局所制御に関しては線量との相関がみられる。近年併用化学療法が奨励され、過分割照射やIMRT、3D-CRT、SRTなどによる線量増加が試みられている。根治的放射線治療が施行された切除不能肺扁平上皮癌の生存率、局所制御率を解析し、線量増加、過分割照射、化学療法併用の意義について検討。

方法

1963年から2006年にフロリダ大学で根治的放射線治療もしくは放射線化学療法を施行されたstage I-IIIBの切除不能肺扁平上皮癌患者275人をretrospectiveに解析。

結果

・患者の内訳: 平均年齢64歳(33-87歳)
Stage I 73人(27%)、stage II 52人(18%)、stage III 150人(55%)
・放射線治療: median 65Gy(43-75Gy)、mean BED 77Gy(51-105Gy)
259人が1日1回の照射、26人が1日2回の照射
化学療法施行 51人(19%)(そのうち90%が併用化学療法)

治療成績
・5年全生存率: stage I 10%、stage II 14%、stage III 7%(p=0.0034)
・5年局所領域制御率: stage I 51%、stage II 38%、stage III 29%(p=0.0004)
・5年無転移率: stage I 81%、stage II 60%、stage III 65%(p=0.0811)

線量65Gy以上vs.65Gy以下での検討
・5年疾患特異的生存率: 23%(≧65Gy)vs. 19%(≦65Gy),p=0.0258、
・5年全生存率: 10%(≧65Gy)vs.? 7%(≦65Gy),p=0.0415
・5年無転移率: 73%(≧65Gy)vs. 60%(≦65Gy),p=0.0119
・65Gy以上の照射で有意に改善。
・平均生存期間、局所制御率では有意差なし。

1日の照射回数での検討
・5年領域制御率: 86%(1日2回照射)vs. 63%(1回照射)p=0.02有意に改善。
・5年全生存率(p=0.35)、5年疾患特異的生存率(p=0.43)では改善の傾向あり。
化学療法での検討
・5年領域制御率: 36%(化学療法あり)vs. 13%(化学療法なし),p=0.01有意に改善。
・2年、5年全生存率(p=0.6411)、5年局所制御率(p=0.583)で改善の傾向あり。

多変量解析
・65Gy以上の線量、stageI,IIの患者で全生存率、疾患特異的生存率の改善あり。

結論

線量増加、加速分割、併用療法が予後を改善した。他の非小細胞癌と経過が異なっており、患者個人に応じた治療戦略が重要と考えられる。フロリダ大学では切除不能stage III肺扁平上皮癌には低用量の化学療法を併用し1日2回 69.6Gyで治療している。

コメント

後方視的解析ではありますが、肺扁平上皮癌における線量増加、過分割照射、併用化学療法の意義が示されています。他の非小細胞肺癌と比べ、扁平上皮癌においては局所・領域制御が重要な因子となります。非小細胞肺癌のなかでも、扁平上皮癌に対して有効な分子標的薬はまだ存在せず、また、特に扁平上皮癌に有効な細胞障害性薬剤も開発されていません。その意味で、肺扁平上皮癌の治療成績向上のためには、3D-CRT、SRT、IMRT、過分割照射などを用いた局所の線量増加が重要と考えられます。今後は、非小細胞肺癌としてではなく、それぞれの組織型に応じた治療方法の確立が検討されなければなりません。


(九州大学・寺嶋 広太郎)