No.128
頭頚部腺様嚢胞癌の治療成績と予後因子

Outcomes and prognostic variables in adenoid cystic carcinoma of the head and neck: a recent experience.

Daniel RG, Bradford SH, Suzanne LW et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 70(5):1365-1372, 2008

目的

Memorial Sloan?Kettering Cancer Centerで最近放治を受けた頭頚部腺様嚢胞癌患者の解析

対象と方法

1990年から2004年迄、59人の原発性頭頚部腺様嚢胞癌患者が当院で放治を受けた。内訳は、口腔が28%(17名)、副鼻腔が 22%(13名)、耳下腺が14%(8名)、顎下腺が14%(8名)、中咽頭が10%(6名)、舌下腺が3%(2名)、上咽頭が3%(2名)、他5%(3 名)である。T分類は、T1が34%(20名)、T2が19%(11名)、T3が14%(8名)、T4が34%(20名)。29%の患者(17名)が IMRTで加療、25%(15名)が3DCRTで加療、そして他は通常照射で加療を受けた。90%(53名)が、頭蓋底を含めて照射されていた。

結果

生存患者の観察期間の中央値は5.9年。5年及び10年時の局所制御及び無遠隔転移生存率は、各々、91%/81%、81%/49%である。
また、5年及び10年時の無病及び粗生存率は、各々76%/40%、87%/65%。単変量解析ではT4期(p=0.004)、肉眼的/臨床的神経浸潤(p=0.002)が、無進行生存率と相関し、T4期とリンパ節浸潤が粗生存率と相関していた。

結論

照射と手術の組み合わせ治療により良好な局所制御を齎し得るが、遠隔転移があると制御不良である。頭蓋底を含めて治療を行うと明らかに微小傍神経浸潤は減るが、肉眼的神経浸潤があれば予後不良である。

コメント

腺様嚢胞癌(ACC)は、1850年代に初めて報告された頭頚部癌の5%未満という稀な上皮由来腫瘍である。5年生存率は比較的高くリンパ節転移も稀ではあるが、無痛性であることや特に肺への転移が多いことから、対応に難渋する疾患である。従来、手術療法で治療されてきたが、幾つかのretrospective studyにて手術後に照射を加えることにより治療成績が良くなることが報告されてきた(そして現在、多くの施設でそれは標準治療となっている)。
現在迄の報告で、再発・転移に関連する多くの因子が示されている。臨床病期・リンパ節転移・断端陽性・高grade・臨床的神経浸潤・微小傍神経浸潤・頭蓋底浸潤等である。しかしながらこれらの間には大きな不一致が存在する。更に本疾患が稀である為、多くの報告は40?50年前の症例も含んでおり、照射や手術の技術自体、現在と著しく異なっているものが多い。
本研究には、retrospective studyに付いて回る限界やバイアスはあるものの、手術と照射で頭頚部ACCを治療すれば、高い局所制御率と粗生存率が得られることが示されている。根治する際の最大の困難が遠隔転移であることも、此れ迄の報告の通りである。治療前の臨床T病期、肉眼的神経浸潤、リンパ節浸潤等が不良予後因子であったが、頭蓋底を照射野に含めれば潜在的な傍神経浸潤を減らせるかもしれないことが示されている。今後、手術標本の更なる病理学的検索・個別化の重要さ、IMRTによる毒性軽減が望まれる。


(東北大・武田 賢)