No.212
局所進行頭頚部癌に対するセツキシマブ併用放射線治療 vs シスプラチン併用放射線治療:第2相試験
Cetuximab and Radiotherapy Versus Cisplatin and Radiotherapy for Locally Advanced Head and Neck Cancer: A Randomized Phase II Trial
Magrini SM, Buglione M, Grisanti S, et al.
J Clin Oncol. 2016 Feb 10;34(5):427-35.
背景
セツキシマブ併用放射線治療は照射単独と比較して局所制御割合、3年生存割合を改善することが知られている。しかし、セツキシマブ併用放射線治療と標準治療であるシスプラチン併用放射線治療を直接比較するランダム化比較試験の結果はまだ報告されていない。
方法
対象は遠隔転移の無い臨床病期III-IV(除くcT1N1)の口腔・中咽頭・下咽頭・声門上部喉頭扁平上皮癌。放射線治療は1日1回2Gy, 総線量70Gyで3D-CRT, IMRT, SIBを用いたIMRTを選択可能。頸部リンパ節予防域の線量は50Gy。セツキシマブは放射線治療開始1週間前に初回量400mg/m2投与し、放射線治療期間中に週1回250mg/m2投与。シスプラチンは40mg/m2を週1回投与。Primary endpointはコンプライアンス、毒性、secondary endpointは局所制御割合、無遠隔転移生存割合、癌特異的生存割合、全生存割合。コンプライアンスは放射線治療中断日数、薬剤減量割合をもって解析した。
結果
症例集積が緩徐であったため、70例を登録した時点で本試験は中断となった。
10日間を超える放射線治療中断はセツキシマブ併用群の13%に認め、シスプラチン併用群では認めなかった。薬剤の用量減量はセツキシマブ併用群の34%に認め、シスプラチン併用群の53%に認めた。死亡を含む重篤な有害事象はセツキシマブ併用群に多く見られた(19% vs 3%, P=.044)。局所制御割合、再発形式、生存割合は同様であった。
結論
セツキシマブ併用放射線治療により治療コンプライアンスは低下し、急性期有害事象は増加した。治療効果は両群で同等であった。セツキシマブ併用放射線治療の恩恵を受ける症例を適切に選択することが今後の課題である。
コメント
Bonnerらが局所進行頭頸部扁平上皮癌に対する治療として、放射線治療単独に比較しセツキシマブ併用群で生存割合が向上することを報告して以降、標準治療であるシスプラチン併用放射線治療に適さない症例に対して、セツキシマブ併用放射線治療は広まってきている。本報告はセツキシマブ併用放射線治療と標準治療であるシスプラチン併用放射線治療をToxicity-based endpointで直接比較するランダム化比較試験である。症例集積が緩徐で中止となってしまったことは大変残念である。また、症例のほぼ半数が中咽頭癌であるにもかかわらず、HPVに関する因子が解析されていないことに留意が必要である。
同様のランダム化比較試験は、本報告の他に3つの臨床試験(RTOG1016, TROG12.01, De-ESCALaTE)が進行中である。日本ではJROSG 12-2セツキシマブ併用放射線治療の観察研究がJROSG 12-2として症例集積中である。これらの臨床試験も大変興味深く、結果も待たれる。
Evidence Level : 1b
PMID: 26644536
(千葉大学 渡辺 未歩)